5W1H+Then状況説明
Who(誰が) | 筆者が |
When(いつ) | 10歳のとき |
Where( どこで) | 家族を放置して放蕩生活を送っていた父親の葬式で |
Why(なぜ) | 推測:「親の葬式で泣かないのは人として異常である」と思い込んでいたため |
What(何を) | 父の死を悲しんでいない自分に対して |
How(どのように) | 「本当は悲しい」と自己暗示をかけ号泣した。 |
Then(どうなった) | 参列していた母やきょうだい、祖母(父の母親)は一切泣いていなかったため少し気まずくなった。祖母からは「本当に悲しんでいる人は葬式の場で涙など流さないものだ」と遠回しに異常さを指摘された。 |
健常行動ブレイクポイント
- 一般に親の死は悲しむべき出来事であるとされているが、筆者の父にはその不文律は当てはまらなかった。父は借金癖・酒癖の悪さ・DV行為により家族全員から嫌われ悪口を言われていた。家族の一員である以上、自分も父への恨みをあらわす行動をしなければ不自然であった。
- 共に過ごした記憶の少ない人間について、その死を号泣して悲しむ行為は(特殊な場合を除いて)異常であるとみなされる。筆者は父と過ごした時間が家族の中でも特に少なかったため、その点でも不自然な行為だったと思われる。
- 人として正しい行為をすることに気をとられた為、父親の死を心から悲しみ受け入れることができなかった。葬式は遺族等が心の整理を行い日常に戻るための場でもあるが、安易な自己暗示はそのプロセスを妨げてしまうと思われる。
どうすればよかったか
- 「彼の行動によりめちゃくちゃな状況にされた家族」の一員として、どのような感情を父に 対して持つべきか考えた方がよかった。その死を喜ぶとはいかないまでも、涙など流さずにいるべきだった。
- 自分と父の関係がそれほど深くないことを認識すべきだった。そもそも「葬式で号泣する行為はどの程度の関係であれば自然/不自然なのか」を何かしらの方法で学ぶべきだった。
- 精神的な問題が生じる場合もあるため、自己暗示は安易に行わない方がよい。人間として正しい行いをやりたい場合、自分の感情を偽るよりはこの健常者エミュレータ等を活用して外形を整えた方がいい。
備考
- 骨上げが始まると自分以外のきょうだい全員が堰を切ったように泣き始めた。周囲の人間も(生前散々な被害を受けていたとはいえ)本当は父の死を悲しんでいたこと、そして自分が泣くタイミングを間違えたことにその時初めて気付いたが、もう涙は涸れていた。
- 火葬が終わった後、親族含めた参列者全員で近所のレストランに行き夕食をとった。筆者は食後のデザートを何回かお代わりし、兄から奇異な目で見られた。当時の筆者は深い悲しみで食欲がなくなるという事例を知らなかったため、そのような不自然な行動をとってしまったのだと思う。
- 筆者の異常さを指摘した際、祖母の目は明らかに潤んでいた。そのことを本人に伝えなかったのは我ながら健常者っぽい行動だったと思う。