このケースでのコミュニケーション失敗の原因は、「彼女の知り合いの中で一番PCに詳しいから話を持ちかけられたのだ」という点を、相手に指摘されるまで認識できなかった点にあるのではないだろうか。
研究室というコミュニティには、ある程度の人数がいて、お互いがお互いのことをそこそこ知っている可能性が高い。
その状況で、女性がわざわざ「私」を選んで話しかけてきたことの理由を考えてみる。
仮に、同じ部屋に女性の親友がいるにも関わらず、わざわざそれほど親しくない自分に話しかけてきたのだとしたら、共感以外の理由だろうな、と推測できる(共感を求めるなら親友に頼んだ方が早いので)。
部屋に二人きりだったのであれば、共感を求められている可能性も十二分にある(ただしあらかじめ世間話ができる程度の関係性が構築されていることを前提とする)。
上記は一般的な
女性からの「一番PCに詳しいから」という指摘を見るに、「私」は、コミュニティ内ではPCに詳しいほうで、なおかつそれがコミュニティ内に知れ渡っている状況と見受ける。
女性は、「私」がPCに詳しいということがコミュニティに知れ渡っているという認識を持っていて、
なおかつ「私」自身と女性とで『「知れ渡っている」という認識を共有している』と期待している可能性が高い。
その認識を持って話しかけたのだとすれば、(性格の悪い口調で書きますが)「あなたに話しかけた時点でPCの故障原因を知りたい以外の用事であるわけがないんですが」という気持ちを持っているかもしれない。
ただ、相手と認識を共有していることを過剰に押し付けるのは、時に、一回しか行ったことのないバーでマスターに「いつもの」と言ったら困る、くらいの迷惑さを持ちかねない。
女性は「故障の原因が知りたい」と「私」に伝えればよいし、会話の入り口に共感を持ってくるのは円滑なコミュニケーションにおいて重要なことなので、
さして悪いやり取りでもないのでは、とも思う。